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大分合同新聞 法律あれこれ「自筆証書遺言の有効性」清源万里子弁護士/記事PDF

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自筆証書遺言の有効性

Q.私の夫は、全財産を私に遺贈する内容の自筆証書遺言を残して、先日死亡しました。遺言を持って銀行に行ったところ、「氏名と印の位置がおかしい」と言われ、預金の引き出しを断られました。どうしたらよいでしょうか。


A. 自筆証書遺言の有効性について、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。

 自筆証書遺言の要件は、遺言者が遺言の全文、日付と氏名を自書し、これに印を押すことです(民法968条1項)。この要件を満たしていない遺言は無効で、夫の遺産については、遺言は無かったものとして、相続人による遺産分割協議の対象となります。もし、協議(話し合い)ができなければ、裁判所の遺産分割調停や審判へと進みます。
 しかし、遺言が有効であれば、あなたは夫の全財産を取得できます(遺留分は例外)。銀行がどのように判断したのか分かりませんが、例えば、氏名の位置は末尾にある必要はなく、本文中に氏名が記載されていても遺言は有効です。また、押印の場所は必ずしも署名の真下でなくても構いません(押印のない遺言を有効と認めた例外的な判例もあります)。
 自筆証書遺言では自署押印によって遺言者が誰であるかが明らかとなればよく、諦めずに弁護士に相談してください。過去に同様の事例で、弁護士名で銀行に書面を送ったところ、銀行が預金の引き出しに応じてくれたケースがありました。
 注意点を二つ。(1)自筆証書遺言については、裁判所の検認手続きが必要となります。(2)自筆証書遺言は失敗の危険があり、また、相続人から「これは本人の筆跡ではなく遺言は無効である」と主張されるかもしれません。公証役場で作る公正証書遺言をお勧めします。

弁護士に相談し、手続きを

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