障害者の実情取り上げて
盲導犬を連れていることを理由に入店や施設利用を拒否された経験のある視覚障害者が52・9%に上ると4月3日付朝刊で報じられた。盲導犬を育成するアイメイト協会の調査で、塩屋隆男代表理事は「盲導犬は視覚障害者にとって目であり体の一部だ」と訴えている。
共生社会の実現に向け、不当な差別を禁止した障害者差別解消法が2016年4月に施行され、3年がたつ。障害者が安心して暮らせるよう、地域生活のさまざまな場面で先入観や偏見、誤解をなくし、不利益を受けたり孤立したりすることがないようにするのは当然のことだ。だが、現実は厳しい。調査がそうした実態を浮き彫りにした。
5月24日付朝刊では、福祉先進国と言われる北欧フィンランドの障害者福祉や教育について知ってもらおうと、内閣府の派遣事業に参加し、講演活動を続ける日田市の上戸木綿子さんが紹介された。
フィンランドの行政機関では障害のある職員が障害に最も詳しいプロと一目置かれるという。「周囲の職員は障害の特性など、分からないことがあれば積極的に尋ねていた。職場でフラットな関係が築かれていた」という上戸さん。共生社会の実現のためには制度を整えるだけでなく、私たち一人一人の意識の持ち方が重要だと感じた。
上戸さんが「違いを尊重できる寛容な社会が必要」と指摘する通り、障害の有無に関わらず、お互いに人格と個性を尊重しながら多くの人が安心して暮らせる社会が実現してほしいと思う。
心温まる話題もある。今秋のラグビーワールドカップ大分開催に向け、大分商高生が、社会福祉法人アップルミントと、パンとクッキーを共同開発したという記事だ(5月30日付朝刊)。
日本代表が着る桜のジャージーにちなんだ商品で、写真もカラーで大きく掲載され、どれもとてもおいしそう。ビッグイベントを盛り上げようと地元高校生と障害者が組んだスクラム。今後は各地のイベントで販売するという。障害者や施設のことを理解してもらう機会でもあり、頑張ってほしい。
本紙には、これからも継続的に障害者を取り巻く環境、実態、課題を取り上げてほしい。共生社会を地域で実現するため、報道の果たす役割はますます重要だ。
令和元年6月23日 大分合同新聞朝刊掲載