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大分合同新聞 私の紙面批評「障害者と地域に”つながり”」清源万里子弁護士/記事PDF

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障害者と地域に”つながり”

中央省庁や自治体が障害者の職員募集で、「自力通勤」や「介護者なしでの職務遂行」を条件にしていた問題が報道されたのは昨年秋。11月2日の本紙「表層深層」は、無自覚な差別意識が根底に存在することを指摘し、介助付きで働く当事者の憤りも伝えた。また、12月2日は「核心評論」で、中央省庁の障害者雇用水増し問題について、死亡者や単に視力が悪い人を算入する手口の悪質さ、第三者検証委員会がまとめた報告書の手ぬるさを指弾した。これらの記事を読み、社会に根深く残る障害者に対する偏見、無知にがくぜんとした方も多いだろう。

障害者差別の実情を正しく伝えることは報道の重要な役割だが、本紙は地元紙ならではの取材力で、県内の障害者雇用に関する取り組みを積極的に報じていて、高く評価している。

昨年9月23日には、別府市に拠点を置くNPO法人の「別府八湯温泉道名人会」と「自立支援センターおおいた」が連携し、共同温泉の清掃に障害者の力を活用する試みを進めていることを伝えた。障害者に働く場を提供するとともに、管理者の高齢化などで存続の危機にある共同温泉の維持につなげるのが狙いという。「きれいになった温泉を使ってもらえるとうれしい」という言葉に障害者の意欲や希望を感じた。

12月21日は、JAおおいた豊肥事業部がサトイモの収穫作業に障害者の就労支援を活用する実証試験に取り組んでいることを紹介。“農福連携”による、人手不足などの課題解決への模索と可能性に触れた。同29日には、高齢化などで墓の維持管理が難しくなる中、県内の障害者施設に掃除の依頼が増えていることを取り上げた。知的、精神に障害がある人たちの仕事が丁寧で、料金が比較的安いことが理由だという。

障害者の活躍する場が徐々に広がっていることに感心するとともに、読んでいて温かい気持ちになる。作業内容が具体的に書かれているのに加えて作業中の写真もあり、作業を依頼する側への情報提供にもなるだろう。このような記事が増えると障害者と地域に“つながり”が芽生えて育まれ、地域共生社会の実現を後押しするのではないか。

共生社会の実現に向け、本紙には障害者を取り巻く課題や意欲的な取り組みを、これからもきめ細かく報道していただきたい。

 

平成31年1月27日 大分合同新聞朝刊掲載

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