情報、多角的に伝えて
今年は4年に1度のオリンピック、パラリンピックがブラジルのリオデジャネイロで開催された。本紙はカラー写真をふんだんに使い、選手たちの活躍を連日報道した。 9月20日の朝刊は「障害超えた一体感」の見出しを掲げ、選手と観客、ボランティアらが一体となり、障害の有無を超えた“人々のつながり”を生み出したと報じた。競技会場や五輪公園で、多くの障害者がボランティアなどのスタッフとして大会を支えたことも紹介。冬季パラリンピック長野大会のメダリストが「『かわいそうな人たちがやっているスポーツ』と思ったら、あんなふうに盛り上がれない」と述べているのは大変印象的だ。今後も選手たちの活躍と感動を紙面で読者に伝えてほしい。 この日の朝刊には、「幸福の服~全ての人におしゃれを」も掲載されていた。お年寄りや体にハンディがある人でも、無理なく自然に着こなすことができる洋服作りをしている服飾デザイナー・鶴丸礼子さんの執筆で、私が楽しみにしている連載の一つだ。 色を見たことがない視覚障害者が色の名称を教える―をコンセプトに、視覚に障害がある女性が着用するカットソーに「コバルトブルー」の色を表す点字と同じ配列になるよう、袖口、裾、肩にピンクに光るラインストーンを付けたエピソードが紹介されていた。カットソーを着て写真に納まった女性の表情は、自信に満ちているように感じた。 これまでの連載で、脊椎カリエスの女性が背骨の湾曲をカバーするデザインの洋服を着て何度もポーズを取った逸話や、脊髄性筋萎縮症のために電動車椅子で生活している女性が、母の着物を軽量化した振り袖を着て喜んだことなど、心の温まる話が数多くつづられている。「服」を通して、体にハンディのあることが社会参加の壁となってはいけない、という鶴丸さんの熱い思いが、この連載にあふれている。 本紙が「スポーツ」や「服」といった読者になじみやすい分野の報道を通して、“共生社会実現”の必要性について分かりやすく問題を提起していることは評価できる。多くの人に影響力がある新聞だからこそ、これからも重要な課題について、実態や問題提起、啓発、解説などの情報を多角的に分かりやすく県民に提供し続けてほしい。