大分合同新聞 私の紙面批評「犯罪被害者の実情伝わる」清源万里子弁護士/記事PDF

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犯罪被害者の実情伝わる

 地方紙の魅力は、地域に密着し、正確な情報を伝え、地域の発展に寄与することだと思う。本紙の犯罪被害者支援に関する一連の記事を読んでいて、地方紙の良さを改めて感じた。
 冬季五輪・パラリンピックが開催され、人々の話題や関心、紙面づくりが偏りやすい時期であっても、本紙は県内の犯罪被害者支援に関する報道に力を入れている。2月22日付夕刊では、県が被害者や遺族の精神的負担を減らす目的で「支援ノート」の作成に乗り出すことを、京都府が導入したノートの写真を添えて紹介した。犯罪被害者支援条例の制定に向けた各市町村の動きも、その都度、丁寧に報じていて、犯罪被害者の尊厳が守られる社会になってほしいという記者の熱い思いが伝わってくる。
 同28日付朝刊は、県が見舞金制度の創設に必要な予算案を県議会に提案したことを報道。4月に施行する県の支援条例に合わせた施策の一環で、見舞金を支給する市町村に費用の半額を助成する取り組みだ。犯罪被害に遭った人や遺族に対する金銭的な賠償は、十分になされていないのが実情で、県と市町村の連携による見舞金制度の実施は重要だ。本紙は、犯罪被害に遭った人や遺族には事件直後、急な出費がのしかかり、当面の資金に困ることも多いという制度導入の背景も丁寧に説明していて分かりやすく、評価できる。
 県内市町村のトップを切り、国東市議会が支援条例案を可決したのは3月9日。翌日の朝刊では議案可決に加え、飲酒ひき逃げ事故の被害者遺族で、条例制定を求めて活動してきた佐藤悦子さんの「新しい風が吹き始めることにとても期待している」という言葉を紹介した。佐藤さんが各自治体を回り、担当者らに「被害者なんてめったに出ない」と言われながらも必要性を訴えてきたこと、請願活動を機に理解が深まったことも盛り込んでいた。
 同29日付朝刊は、県内18市町村の全てが見舞金の支給制度を導入する見通しとなったことを報じた。このように条例制定や制度導入までの過程を具体的に伝えることができるのは、地域に根差した本紙だからだ。
 全ての犯罪被害者に支援の手が届く社会になることを願っている。本紙には、地方紙ならではの丁寧な取材に基づいた、犯罪被害者支援に関する報道を継続していただきたい。

平成30年4月1日 大分合同新聞朝刊掲載