大分合同新聞 法律あれこれ「隣の家にタケノコが『侵入』」 清源万里子弁護士/記事PDF

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隣の家にタケノコが「侵入」

Q. 私方の竹(モウソウチク)の地下茎が伸びて隣人方にタケノコが生えました。すると、隣人は私に無断でタケノコを掘って食べてしまいました。隣人に損害賠償を請求することはできますか。また、枝や果実の場合はどうですか。


A. 残念ながらできません。

【根やタケノコ】隣から伸びてきた木の「根」や「タケノコ」が境界線を越えて自分の庭に侵入した時は、持ち主に断ることなく根やタケノコを切り取ることができ、持ち主に返還しなくてもよいと考えられています。従って、隣人が自分の庭に生えたタケノコを掘って食べたとしても法律上は責任を問われません。もっとも、木の根を切り取ることによって、その木が枯れてしまうと損害賠償責任が発生することもあるので、注意が必要です。

【枝】隣地の木や竹の枝が境界線を越えて自分の庭に侵入して来た場合は、持ち主に無断でその枝を切ることはできません。持ち主に対して、境界線を越えた枝を切るよう要求できるだけです。持ち主が切ってくれなければ、少し面倒ですが、持ち主の費用で枝を切るよう裁判をすることになります。
 ただ、枝を切る要求は常にできるわけではありません。隣の木の枝が伸びて家の壁を壊しているなど、何らかの重大な損害が現実に生じているか、または生じる恐れのある場合に限られます。損害が生じるとしても、当方の損害より木の持ち主の受ける損害(枝を切ることによって高価な木が枯れる)の方が大きい場合は枝を切ることを要求できません。

【果実】隣から伸びてきた木の枝になっている果実(木の実)も「枝」の場合と同様に考えます。果実を勝手に採ってはいけません。隣地に落下した果実の所有権は木の持ち主に帰属すると考えられています。

持ち主への返還義務なし