大分合同新聞 法律あれこれ「職場のパワハラ対応は」 清源万里子弁護士/記事PDF

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職場のパワハラ対応は

Q 先日、従業員から「仕事中、上司に怒鳴られ、頭をたたかれました」と相談を受けました。会社として、今後どのように対応したらよいでしょうか。


A 従業員の話が事実なら、上司の行為はパワハラといえ、会社も責任を負う場合があります。

 職場のパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為または職場環境を悪化させる行為をいいます。
 パワハラは、未然に防止することが一番です。会社は、パワハラを許さないという方針を明確にし、就業規則に禁止規定を盛り込むとよいと思います。パワハラに関する社内研修も重要です。また、事後的に対応する相談窓口を複数用意することもお勧めします。
 相談を受けた場合は、被害者と加害者の双方から話をよく聞くことが大切です。特に、被害者の話を聞くときには非難をせず、ゆっくり時間をかけて疑いを挟まずに聞くことがポイントです。双方の話を聞いた後は、内容を報告書にまとめて、事実が確定した結果、パワハラがあったということであれば、問題のあった上司を注意または懲戒する必要があります。
 本件の場合、上司が従業員の頭をたたいたのが事実であったとすると、仮に指導目的であったとしても、頭をたたく行為はパワハラに当たります。会社は就業規則に従って、上司を懲戒する必要があります。
 また、上司のパワハラは不法行為(民法709条)に該当するため、従業員は上司に対して損害賠償請求をすることができ、会社も安全配慮義務違反(同415条)や使用者責任(同715条)に基づき、連帯して責任を負う可能性がありますので注意が必要です。パワハラの問題は複雑なため、一度専門家に相談してみて下さい。

会社は上司を懲戒する必要も