大分合同新聞 法律あれこれ「義父の遺産相続割合」 清源万里子弁護士/記事PDF

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義父の遺産相続割合

Q 先月、私の義父が亡くなりました。相続人は夫と義姉、義妹の3人です。義姉も義妹も相続分を主張しています。夫は義父の遺産を均等に分けたいようですが、長男の夫が遺産の全部を相続するのが筋ではないでしょうか。


A 結論的には、相続人3人で均等にすべきでしょう。旧民法では家督相続、すなわち戸主たる地位(これに「家」の財産が随伴する)の承継も行われていたので、長男のみが義父の全遺産を相続するという考えもありました。しかし、1947年の新憲法の施行に伴い、「家」の制度(「戸主」の制度)が全廃され、家督相続はなくなりました。

  現民法では、共同相続が開始され、きょうだい3人が義父の遺産を3分の1ずつ相続します。従って、義姉や義妹が相続分を主張するのは、法律上認められます。この点を誤解して、長男一人が全遺産を相続すると考えている人がいるようですが、間違いです。
 しかし、遺言があれば別です。遺言によって法定相続分(3分の1ずつ)とは異なる相続割合を定めることができます(ただし、遺留分の問題があります)。また、寄与分の主張が考えられます。もし、ご主人が義父の財産の維持や増加に特別の寄与(貢献)をしていれば、ご主人は遺産を余分にもらうことができます。
 義父の相続人は、ご主人です。ご主人がきょうだい3人で仲良く均等に分けたいと望んでいる以上、均等分配すべきでしょう。自分の配偶者の遺産相続に口を出す人がいますが、法律上は口を出す権限はありません。口を出されて、きょうだい仲が悪くなったというケースにも出合いますが、それはとても不幸なことです。

平成30年1月5日 大分合同新聞朝刊掲載

きょうだいは均等に