大分合同新聞 法律あれこれ「元妻が慰謝料追加請求」 清源万里子弁護士/記事PDF

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 元妻が慰謝料追加請求 

Q 妻に100万円の慰謝料を支払って離婚しました。「これで一切終わり」という約束でしたが、妻はさらに100万円を請求してきました。どうしたらよいでしょうか。


A そもそも、あなたに慰謝料を支払う義務があったか否かが問題です。慰謝料の発生原因の事実(不貞や暴力など)がなければ、100万円を支払う必要もなかったことになります。

 

 しかし、一度支払った100万円を取り戻すことはとても困難です。そこで、100万円の追加請求について冷静に対応することが重要です。そのためには、「これで一切終わり」という約束が夫婦間でされていたことを証明する必要があります。
 私たち弁護士が依頼を受けて和解(示談)するときは『当事者双方は、本件離婚に関し、100万円を支払うなどの約束の他、名義のいかんを問わず、金銭その他一切の請求をしない』という内容を盛り込んだ書面を作成します。
 この『 』の中に書かれた部分を「清算条項」といいます。この条項によって、100万円を支払った夫側は、その一部であっても返還を求めること(返還請求)ができなくなります。逆に100万円を受け取った妻側は、追加請求ができなくなります。
 今回のように書面上の清算条項がない場合でも、専門家は、内容証明郵便を出したり、調停を申し立てたりして争いの解決に努力します。今は100万円の追加の支払いをせず、まず落ち着いて専門家に相談することをお勧めします。後の争いを避けるためにも、「清算条項」を記載した和解書面の作成をしておくといいでしょう。

 

平成30年10月11日 大分合同新聞朝刊掲載

「清算条項」の証明必要