大分合同新聞 法律あれこれ「遺言 私は相続「なし」」清源万里子弁護士/記事PDF

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遺言 私は相続「なし」 

 

Q. 先月、母が亡くなりました。父は既に他界しており、相続人は私と姉の2人です。母の遺産の内容は分かりません。最近、「全ての遺産を姉に相続させる」という母の遺言が見つかりました。私は母の遺産を相続することができないのでしょうか。


A. 遺留分の範囲内で母親の遺産を取得できます。

まず、遺言があっても無効の場合(遺言をチェックしてください! 公正証書でない場合は要注意です)、遺言がない場合と同じく、原則として法定相続分に従った相続が行われ、その場合のあなたの相続分は母親の遺産の2分の1です。

 次に、有効な遺言がある場合には、原則として遺言に従った相続が行われますが、法律は兄弟姉妹以外の相続人に遺留分(被相続人による財産処分を制限して、一定の相続人に留保した相続財産)を保障しているため、あなたも母親の遺産の4分の1を遺留分として取得できます。

 もっとも、遺留分権があるからといって、自動的に母親の遺産を取得できるわけではありません。母親の死亡と母親の遺言書の存在を知ったときから1年以内に、姉に対して「遺留分減殺請求権」を行使する必要があります。この遺留分減殺請求権の行使の意思表示は、内容証明郵便で行うのが確実です。

 しかし、あなたが遺留分減殺請求権を行使しても、姉が素直に財産の返還に応じてくれるとは限りません。そのような場合は、姉の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺留分減殺請求の調停を起こすのがよいでしょう。なお、遺留分減殺請求権を行使しておけば、調停や裁判は前述の1年以内にする必要はありません。

 遺留分減殺請求調停を起こすには、母親の遺産や生前贈与の調査など複雑な手続きが必要です。一度専門家に相談してみてください。

遺留分の範囲内で取得