大分合同新聞 法律あれこれ「交通事故の損害賠償金」 清源万里子弁護士/記事PDF

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交通事故の損害賠償金

Q.自転車で通勤中、自動車に追突されました。衝撃はかなりのものでしたが、当時は会社がとても忙しかったので激痛に耐えながら通勤しました。ところが最近、加害者の加入する保険会社から「1日の通院だから、この金額で示談してくれ」と言われました。でも、あんな死ぬような思いをしたのに提示された金額では納得できません。加害者から高額の損害賠償金を取ることはできませんか。


 A. 交通事故に遭ったら適切な治療を受けることをお勧めします。

 (1)入通院の勧め
 交通事故の被害者は加害者に対して治療費、交通費、入院雑費、休業補償費、慰謝料などの損害賠償請求ができますが、請求には診断書や診療報酬明細書、タクシーの領収書、休業損害証明書などの証拠が必要です。慰謝料も通院した期間、入院した期間でいくらと計算されます。従ってあなたが適切に入通院していれば結果的に証拠が残り、適正な損害賠償額が算定できたはずです。しかし、入通院せず会社に出勤すれば、あなたに有利なエックス線写真でもない限り「痛くないから出勤した」と評価されるおそれがあり、その時は高額の賠償金は望めません。激痛があれば我慢せずに入通院することをお勧めします。

 (2)反対のケース
 (1)の例とは逆に、交通事故で軽い衝撃を受けた被害者が、事故を悪用して長期間入院し、多額の賠償金を請求してくることがあります。衝撃の程度がとても軽く、「あの程度の事故で、こんなに長い入通院は常識では考えにくい」というときは、入通院の必要性は否定できないとしても(被害者は本当に痛いのかもしれません)、交通事故と入通院との間に因果関係はないと評価されるかもしれません。その場合、加害者側(保険会社)は、病院や被害者に対して入通院再考の手紙を出したり、債務不存在確認の調停や裁判を起こしたりします。

適切な入通院で証拠を