大分合同新聞 法律あれこれ「高校生の娘が援助交際」清源万里子弁護士/記事PDF

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高校生の娘が援助交際

Q. 高校1年生で16歳の娘のA子が、妻子がいるBさんと援助交際をした(関係を持った)という理由で、Bさんの妻のCさんから慰謝料を請求されました。A子は未成年者なので、慰謝料を支払う義務はありませんよね。


 A. いいえ。未成年者でもA子さんは慰謝料を支払う義務があります。

女子高校生などが「誰にも迷惑を掛けていない」と主張する援助交際は、実は、多くの人に迷惑を掛けている法律違反なのです。すなわち、A子さんとBさんの援助交際(女子高校生などの売春)が原因でBさんとCさんの夫婦関係が破綻した場合には、Cさんは不貞行為を理由にA子さんとBさんに対して慰謝料を請求することができます。
 この不貞行為に基づく損害賠償責任の法的根拠は、民法第709条の「不法行為責任」です。この不法行為責任の主体となりうる能力(自分の行為が違法なものとして法律上非難されるものであることを弁識しうる能力のことで「責任能力」といいます)は大体小学校を終える12歳ぐらいで備わると考えられています。
 従って16歳のA子さんは未成年者ですが、責任能力は十分にあり、慰謝料を支払う義務があります。ただA子さんは無収入と思われますので、支払い能力には不安があります。責任能力がある未成年者の親もまた、Cさんに対して民法709条による不法行為責任を負う場合がある(監督義務違反)ことに注意してください。過去に本件と同様の援助交際をした女子高校生とその親が100万円の慰謝料を支払ったケースがありました。
 なお、以上述べたのは民事の問題です。Bさんが児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰および児童の保護等に関する法律違反や、青環条例違反になるかもしれないことは刑事問題として別個の問題となります。

未成年も慰謝料の義務