大分合同新聞 法律あれこれ「相続人がいない場合の財産分与」清源万里子弁護士/記事PDF

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相続人がいない場合の財産分与

Q. 近所に住む男性が亡くなりました。彼には相続人がいないため、私が面倒を見てきました。葬式も出し、今後の仏事などもいろいろと費用が掛かると思います。私は彼の相続人ではありませんが、特別縁故の申し立てをすれば財産を取得できると聞きました。本当でしょうか。


 A. その通りです。民法は相続人の範囲を被相続人の配偶者、子あるいはその代襲相続人、直系尊属、兄弟姉妹あるいはその代襲相続人に限っています。

相続人がいない場合は、その相続財産をどう処理するかが問題となります。そこで国庫に帰属させる(民法第959条)よりも、被相続人と特別な縁故関係があった者(特別縁故者)に与えた方が被相続人の遺志にかない、その財産の効用も発揮されることから、民法は「特別縁故者の制度」を設けました。
 特別縁故者に当たる者としては、(1)被相続人と生計を同じくしていた者(2)被相続人の療養看護に努めた者(3)その他被相続人と特別な縁故があった者―があります。
 自分が特別縁故者に当たると思う人は、相続人を捜すための公告(民法第958条)で定められた期間(6カ月)を過ぎてから3カ月以内に家庭裁判所に対して財産分与を求める審判の申し立てをしなければなりません。相続人捜索の公告をするには、事前に家庭裁判所に対して「相続財産管理人」の選任の申し立てをし、相続財産管理人を選任しておく必要があります。
 本件では亡くなった男性に相続人がいないので、あなたは家庭裁判所に対して特別縁故者に対する相続財産の分与の申し立てをすることができます。家庭裁判所があなたを彼の特別縁故者と認めれば、相続財産をもらうことができます。

特別縁故の申し立てを