大分合同新聞 法律あれこれ「借用証明書なしで貸し借り」 清源万里子弁護士/記事PDF

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借用証明書なしで貸し借り

Q. 1カ月前、友人のAさんに50万円を貸しました。ところが最近Aさんが「実印を押した借用証書がないので貸し借りはなかった」と言い始めました。確かに何の文書も作成しなかったのですが、借金は発生していますよね。


 A. 理論的には借金関係(「消費貸借」といいます)は、「貸そう」「借りよう」という合意(返還合意)と、金銭の授受で成立します。従って借用証書(書面)がなくても、借用証書に実印が押されていなくても、さらには印鑑証明書が添付されていなくても借金は発生しています。

 本件の場合、50万円の消費貸借契約が成立していることになります。なお、2004年の民法改正によって、保証契約は書面でしなければ効力が生じないことに注意してください。
 実際、国民の全てが真実を述べれば紛争は発生しません。しかしAさんのようにうそを言う人がいるため紛争が発生し、「証拠」が重要となってきます。借用証書などの書面(証拠)がないと、裁判ではなかなか認められないのが実情です。
 書面がなく、「借金か贈与か」でよく争われるものに「男女間の金銭授受」があります。女性の歓心を買うために渡していた金銭について、別れ話が出た途端、贈与か借金かで争われるケースが多く見られます。金銭授受の際には贈与か借金かを書面で明確にしておくべきでしょう。
 書面があると、その書面が証拠となって書面の内容通りの権利義務関係が裁判で認定されるおそれがあるので注意してください。例えばお金を借りていなくても、借用証書に署名押印すれば借金を背負うおそれがあります。
 また、借りたお金を使ったかどうかは借金の発生とは別問題です。Cさんが消費者金融会社から借りた30万円をBさんが使った場合、消費者金融会社に対して30万円の返還義務を負うのはBさんではなくCさんになります。注意してください。

書面が契約の証拠に