大分合同新聞 法律あれこれ「学校でのいじめによる損害賠償」 清源万里子弁護士/記事PDF

→記事PDF

学校でのいじめによる損害賠償

Q. 子どもが学校でいじめにあった場合、誰にどのような請求ができるのでしょうか。


A. いじめた子ども、親、学校設置者、教員に分けて説明します。

【いじめた子ども】責任能力がある子どもは不法行為責任を負います。責任能力の有無の分かれ目は、中学1年生ぐらいです。

【いじめた子どもの親】子どもに責任能力がない場合は、親は親権者としての監督義務を尽くしたことを証明しない限り責任を負います。親の監督義務の範囲は極めて広く、例えば、親には他人の生命身体に対して不法な侵害をしないという生活態度を常日頃から子どもに教える義務があり、陰惨ないじめをするのは教育が不足しているからだと考えられます。広範囲の監督義務を負う親が免責されることは、あまりありません。責任能力がある子どもの親も、監督義務違反と加害行為による結果との間に相当の因果関係が認められるときには、民法第709条により責任を負います。

【学校設置者】学校設置者とは運営している法人や自治体のことです。雇用されている教員が学校教育において児童・生徒をいじめから保護すべき義務を怠った場合は、国公立の学校は国家賠償責任法第1条により、私立学校の場合は民法第715条(使用者責任)により責任を負います。責任根拠を安全配慮義務違反に求める考えもあります。

【教員】私立学校の教員は民法第714条第2項の代理監督者として民事責任を負います。もっとも、教員の監督義務は学校教育課程に限定されています。なお、国公立の教員は国家賠償責任法の解釈上、民事責任を負いません。
 いじめられた子どもは肉体的にも精神的にも大きな苦痛を受けます。治療を要する時は治療費、自殺に追い込まれた時は逸失利益(将来得たであろう利益)、その他慰謝料など交通事故に遭ったときと同様の請求ができます。

交通事故と同様の請求