大分合同新聞 私の紙面批評「ホスピス報道継続を」清源万里子弁護士/記事PDF

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ホスピス報道継続を

 重い病気や障害がある子どもが、家族と一緒に安心して過ごすための施設「TSURUMI 子どもホスピス」(大阪府)の取り組みや利用者の思いなどが、6月26日の本紙朝刊「ニッポンの現場―記者がゆく」で紹介された。
 ホスピスが目指すのは「病院ではなく第二の家として、自然体で過ごせる場」だという。ホスピスの様子をカラー写真やカラーイラストを用いて紹介しており、読んでいてイメージが湧きやすかった。
 ホスピス事務局長の「友達と遊んだり、自宅の外で少しの休息を取ったりするのは、病気の子どもやその家族にとってささやかな望み」という言葉からは、重度の障害がある子どもや家族が友達と遊んだり、自宅の外でほんの少しの休息を取ることさえも難しい状況にあることがうかがえる。
 出生時に仮死状態となり、脳性まひになった男児の母親は「このホスピスは息子にとって唯一、歓迎される憩いの場です」と話している。この言葉から障害のある子どもがいる家族の思いが伝わってくる。重病の子どもたちと家族は、屋外で友人らと触れ合いたくても、感染症などへの懸念から外出を控えるケースが多いとも書かれていた。
 「TSURUMI 子どもホスピス」のように、障害のある子どもが安心して楽しい時間を過ごすことができ、家族が悩みや情報を共有できる場は、子どもにとっても家族にとっても大きな支えになるだろう。
 日々の忙しさに追われ、障害のある子どもや家族がどのような不安や悩みを抱えて生活しているかについて、意識することなく生活している方は多いのではないか。障害のある子どもの生活支援は、家族だけの問題ではなく社会全体の問題であるはずだ。社会全体で、障害のある子どもや家族の抱える不安、悩みなどを理解することは「共生社会の実現」「社会参加の機会確保」のための第一歩である。
 大分県では「障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる県づくり条例」が今年4月に施行されたばかり。県民への趣旨の浸透と、山積する課題の解消が熱望されている。本紙は、宿泊の受け入れを目指す「TSURUMI 子どもホスピス」の今後の展開や、他地域のホスピス開設に向けた動きなどについても、引き続き報じていただきたい。