大分合同新聞 私の紙面批評「『DV』踏み込んだ記事を」清源万里子弁護士/記事PDF

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「DV」踏み込んだ記事を

 1月21日付の本紙夕刊は、「被害が過去最多」の見出しを掲げ、県警が2015年に対応したストーカー、ドメスティックバイオレンス(DV)の件数(速報値)を報じた。ストーカーは481件(14年比118件増)、DVは939件(同173件増)で、増加傾向が続いているという。
 DV案件を多く扱う弁護士として、相談件数が年々増加していることは実感している。これは単純に発生件数が増えているというだけではない。かつて、家庭内の問題、単なる夫婦げんかとして処理されていたDVが時代の変化に伴い、我慢しなくてよいもの、相談してよいもの、犯罪に当たるもの―といった認識が社会に広まってきたという背景があるように思う。DVやストーカーに関する記事は、被害者に意識の変化をもたらすためにも、とても重要だ。
 ただ、DVの被害者の中には、加害者と別居や離婚をしても、その後も加害者に暴力を振るわれるのではないかという不安や、金銭面の問題などで「避難」をちゅうちょする方も多い。本紙には、もう一歩踏み込み、避難後の生活原資を確保する方法や、加害者の接近を防ぐ方法など、法的に取り得る手段も紹介してほしい。知識を得ることが被害者のより迅速な避難につがると思われるからだ。
 新年から少し重たい記事に触れたが、本紙には親子にうれしい、ほっこりした記事もある。毎月1回、朝刊に掲載される「読み聞かせにこれ! 後藤惣一先生のオススメ本」の連載だ。2007年春に夕刊でスタートし、2年後からは朝刊の家庭面に移った。通算100回を超えている。
 読み聞かせの時間は、仕事や家事で疲れているお父さん、お母さんにとっても子どもと触れ合える大切なひとときだ。絵本の表紙写真と、その内容を優しく紹介してくれるこの連載は、読み聞かせの題材選びに最適。連載を楽しみにしている保護者は多いだろう。
 ただ、絵本の表紙を掲載するのであれば、カラーで見たいなと思う。色彩情報が加わることで絵本の持ち味が一層伝わるし、子どもと一緒に読みたい本を探しやすくなるだろう。
 DVの記事も絵本の連載も、女性や子どもを取り巻くもの。本紙には、子どもや女性といった社会的弱者に優しい記事や連載を今後も期待したい。