大分合同新聞 私の紙面批評「子どものSOSに対応」清源万里子弁護士/記事PDF

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子どものSOSに対応

全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は、厚生労働省の統計によると児童虐待防止法施行前の1999年度は1万1631件だったが、2013年度は7万3802件と15年間で約6・3倍に増加している。虐待によって子どもが死亡した件数も高い水準で推移している。これまでにも述べたが、私たち大人は21世紀を担う人類共通の宝である子どもたちの健全な育成に真摯(しんし)に取り組まなければならない。

本紙5月14日付の夕刊には、県弁護士会が開設した無料電話相談「子どもの権利110番」の記事が掲載されている。この110番の取り組みは、法律の専門家が子どもたちの“SОS”を直接受け止め、適切な対応をしていくのが狙いである。このような子どもたちのSОSと支援、救済などに関する新聞掲載はとても有益である。

ところで、東京弁護士会が1994年から制作し、弁護士が子どもと一緒に出演する創作劇シリーズ「もがれた翼」のパート9として2002年に上演された「こちら、カリヨン子どもセンター」。この芝居がきっかけとなり、04年6月にNPО法人カリヨン子どもセンターが設立され、日本で初めて子どもシェルターが生まれた。

その後、全国で次々と子どもシェルターが立ち上がっている。県内でもNPО法人おおいた子ども支援ネットが自立援助ホーム「みらい」を開設した。これを紹介した本紙記事(4月29日付朝刊)もありがたく感じた。
 大人社会に見捨てられた孤独な子どもたち。心を閉ざす彼らの健全な育成には家庭・学校・地域社会の連携が必要不可欠である。子どもたちの発信するSОSを大人社会が見落とさないように、また、子どもたちがシグナルを発信しやすいようにすることが、とても重要だ。

既に県や市町村、各校のPTA、子ども会、健全育成協議会、要保護児童対策地域協議会など、子どもたちを取り巻く関係機関は、さまざまな場面で連携の強化を図るとともに、試行錯誤を重ねながら活動している。このような連携強化や諸活動についての情報の収集、紙面上での提供が今後も継続され、さらに充実することを期待している。