大分合同新聞 私の紙面批評「分かりやすい報道を」清源万里子弁護士/記事PDF

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分かりやすい報道を

我が国の合計特殊出生率は1.43で少子高齢化は進んでいる(2015年3月8日付大分合同新聞朝刊に少子化特集あり)。だからこそ、私たち大人は、21世紀を担う人類共通の宝である子どもたちの健全な育成に頑張らなければならない。

さて、今日、子の健全な成長発達を阻害する要因の一つとして面会交流の拒否がある。離婚等で夫婦が離れて暮らすようになった後も両方の親から愛されていると感じることが子の健全な成長には重要であるから、別居親(一緒に暮らしていない親)と子との面会交流は(虐待等の事情がない限り)実現されるべきであるが、これを嫌う監護親が多いのも事実である。面会交流を拒否された別居親は面会交流を求めて家庭裁判所に調停等を申立てるが、家庭裁判所の調停委員が懸命に説得しても面会交流を嫌がる監護親は多く、裁判所での決定事項を守らない監護親も多い。苦肉の策として、最高裁平成25年3月28日は、間接強制(約束を守らなかった相手に金銭の支払いを命じるもの)を認める画期的な決定を下し、福岡家庭裁判所平成26年12月4日は、面会交流を拒否した母親から父親へ親権を変更する画期的な審判を出した。

ところで、この福岡家庭裁判所審判を紹介した大分合同新聞2014年12月18日付朝刊の報道記事は、正確な調査に裏付けされたもので実に分かりやすく我々専門家にも有用であった。裁判所発行の「面会交流のしおり」を紹介し、最高裁判決や2012年の民法改正、大分家庭裁判所の面会交流調停申立件数を詳細に調査報告し、面会交流支援機関「家庭問題情報センター」(東京)の代表談話も掲載している。我々専門家の中にも、民法改正や最高裁判決を正確に熟知していない者は多いであろうから、このような正確な調査に基づいた報道は実に有用で、また、問題の所在を市民に分かりやすく示し、現時点での最善の解決策を懇切丁寧に示す報道のあり方については素直に賛同できる。今後も記者の勤勉さに期待するものである。