大分合同新聞 法律あれこれ「長男に財産管理任せたい」清源万里子弁護士/記事PDF

→記事PDF

長男に財産管理任せたい

Q. 私は現在75歳です。頭はしっかりしており、判断能力にも問題はありません。ただ、今後自分が認知症などになって判断能力が低下したとき、私の財産を誰が管理するのかが心配です。私は、自分の判断能力が低下した後は、長男に財産管理を任せたいと思っているのですが、そのようなことはできますか?


A. あなたと長男との間で、あらかじめ任意後見契約を結んでおけば、長男に財産管理を任せることができます。

【任意後見契約】
任意後見契約とは、本人が、契約の締結に必要な判断能力を持っている間に、将来自分の判断能力が不十分な状態になった場合に備え、あらかじめ自分の代理人となるべき人と、その代理権の範囲を契約によって定めておく制度です。任意後見契約を結ぶことによって、実際に本人の判断能力が不十分になったとき、その契約の効力を発生させて、自分が選んだ代理人に、自分が委託した後見事務を行ってもらうことができます。任意後見契約は、公正証書によって締結しなければなりません。任意後見契約が締結されると、任意後見契約の登記がなされます。任意後見契約の効力は、家庭裁判所が任意後見監督人選任の審判をしたときに発生します。

【法定後見制度との違い】
法定後見も任意後見も、判断能力が不十分な成年者を保護するための制度(成年後見制度)です。法定後見制度は、裁判所の手続きによって後見人を選任する制度で、判断能力が不十分な人(本人)の権利擁護者を裁判所が選任し、その権利擁護者の権限(代理権)も裁判所が決定します。
 一方、任意後見制度は、契約によって後見人を選任する制度で、本人の権利擁護者も代理権の範囲も、判断能力が不十分になる前の本人の意思で決めることができます。任意後見制度は、自己決定の尊重の理念を最大限に生かすための制度だといえます。

任意後見契約を結んで